学習塾に勤めていたときの、ある生徒の変化がとても衝撃的だった。
今でも、思い出すたびに自分の原点に帰る。
中学受験を控えた小学6年生で、本人は「すごく受験がしたい」というわけではなかった(ご家族の意向)。
そのためモチベーションも上がらず、まったく勉強しない。
保護者も「どうしたらいいのか分かりません」という状態での出会いだった。
大逆転合格した生徒が変わった瞬間
なんとかやる気を出させてあげたくて…
「どうしたらやる気が出るのか?」
あの手この手で、その「スイッチ」を探りながら、日々その子と向き合ってきた。
勉強に向かう態度も、成績も、少しずつ変わってきたものの…
「もうちょっと頑張ってもらわないと厳しいな」という状態が続いていた、ある日のこと。
志望校の過去問を解いてもらったら、初めて60点取ることができた。
その点数を見て、彼は私に言ってきたのだ。
「先生、俺受かるかも」
そのときの表情が忘れられない。
何かを確信したような、安心したような、そんな感じ。
入試まで残り2ヶ月くらい。まだ合格圏には全然届いていない。
それでも私は思った。
「あ、この子はもう大丈夫だ」
「絶対に合格できる」
根拠なんてもちろんなかったけれど、見えてしまったのだ。合格して喜んでいる未来が。
この日から、彼の勉強に向き合う姿勢がガラッと変わった。
明らかに前のめりに取り組むようになったのだ。もう志望校から目を反らさなかった。
そして、最後までその姿勢を貫き…合格率30%以下からの大逆転合格。
多くの子どもたちを見てきたが、この子は特に記憶に残っている。
はっきりと「変わる瞬間」を見てしまったから。
自分もそうなれるとは思えなかった
当時は20代前半、今のようにマインドの知識なんてなかった。
それでも、「上部ではなく内面、動機が大事」「心から信じられたらできる」ということは、なぜか分かっていたらしい。
しかし、自分の身にも彼と同じような〈変わる瞬間〉が訪れる、なんて思えなかった。
子どもたちには未来があるけれど、大人の自分にそんなものはない。
選択肢なんてない(就活がうまくいかなかったから)。
流されるように生きていくしかない…
子どもと接する仕事をしていて辛かったのが、子どもたちと自分を比較して、
もっと頑張っていたら…
もっと本気になっていたら…
こんな大人にならずに済んだのに…
このように延々と考えてしまうことだった。
はっきりと言葉にしたことはないが、なんだか自分が反面教師のようで、いつも後ろめたい気持ちがあった。
「大人にもこんなことが起こるのか?」
そんな私だったが、たくさん迷走し、マインドの大切さに気づき、今ではそれを伝える講師となった。
今だからこそ言えるのは、「大人も子どもも関係なかった」ということ。
大人にも明るい未来がある。
選択肢はいくらでもある。
生き方は自分で決められる。
先ほどの塾時代の経験。
「大人にもこんなことが起こるのか?」と聞かれたら…私は「Yes」と答える。
自分を心から信じられたら、変わる。
信じてくれる人の存在は大切だが、それでも最後は自分である。
(自分が自分を信じていなければ、どんなに周りが応援してくれても、すべてひっくり返してしまう)
自分との信頼関係を強固にするため、私はこれからもノートを書き、マインドの学びを伝えていく。