「さっき何を食べたか覚えていない」
これは、忘れっぽいとかそういう話ではなく、「自分を大切にしていない」というサインかもしれない。

食事という、生きていくのに必要なことさえ楽しめない。味わえない。
そんなときは必ず、それをさせてあげられない原因がある。
過去の私も経験があるので、当時のエピソードと、どうやって解決へ向かっていったのかを残しておく。
自分よりも他人優先だと気づいたときのこと
数年前に人材系の会社で働いていたとき、ひとりで20〜30人のスタッフの勤怠管理や、メンタルケアなどを担当していた。
24時間稼働のような状態で、夜遅くにメッセージを返すようなことも。
大変ではあったが、それが当たり前だと思っており、何の疑問も抱かなかった。
でも、あるとき、すごいことに気づいてしまったのだ。
昼休みに、当時常駐していたオフィスビルの下にある商業施設で昼食をとり、お店を出てエレベーターホールまで歩いていたときのこと。
「あれ、さっき何食べたっけ?」
お店を出て30秒も経っていないのに、何を食べたのか思い出せなかったのだ。

そこで、自分の行動を振り返っていくと…
右手でご飯を食べ、左手には常にスマホを持ち、昼休み中もスタッフからのメッセージに返信をしていた。
自分の食べているものなんて、ほぼ見ていない。
それを平日、毎日。
無意識でやっていたことに、やっと気づいた瞬間だった!!!
そのメッセージの返信というのも、決して即返信が必要な内容ではなかった。
「できるだけ早く返してあげないと」
「私の対応が悪いと、本社にクレームがいってしまうかもしれない」
そんな思いからの行動であった。
お腹はいっぱいになるけれど、食べたものが美味しかったのか分からない。何を食べたのかも覚えていない。
これが私の昼休み。
朝から晩まで、休みなく仕事をしているのと同じである。

思い返せば、新卒で塾業界に入ったころからずっと、休み時間に休んでいたことがなかった。
自分が現場のトップで、仕事中も休憩をとっていいことにはなっていたけれど…常に誰かに話しかけられる。いつ電話がかかってくるか分からない。
その度に手を止める。食べかけのご飯を片付けて仕事に戻る。
「すぐに対応してあげなきゃ」
「待たせたことでクレームになったらどうしよう」
自分の休憩なんて後回し(というよりなし)で、生徒や保護者様の対応をしていた。
「残ったご飯、もう食べられないかな…」
「1時間休めていないけれど、みんなを待たせちゃいけないし仕方ないよね」
転職しても常にそんなことの繰り返し…
「いつも他人が優先」
これが、やっと分かった「衝撃の事実」であった。
働き方が変わるまで
「昼食に何を食べたか覚えていない」事件。
(私としては大事件だった)
その2〜3ヶ月後に、それとは全く別の理由でライフデザイン講座を受講することになった。
参考:ライフデザイン講座について少し触れています。
そして講座を受講している間に、転職もせず、私の働き方は大きく変わった。
消耗せずに働けるようになったのだ。

自分の休憩時間を大切にした
まずやってみたのは、昼休みにスマホをしまって、食事だけに集中するということ。
連絡を返さなければ…という気持ちを抑えて。
これが最初は落ち着かなくて、日々訓練のようだった。笑
でも続けていくうちに、食事を「美味しい」と感じながら食べられるようになっていった。
「このサラダのドレッシングが好みだな」とか、「珍しい味付けだな」なんて味わう余裕まで出てきた。
そして気づいたのだ。
「昼休みに連絡を返さなくても、誰も文句なんて言ってこない」ということに。
昼休みの1時間くらい、自分だけのために使っても大丈夫だった。
本社からのクレームも来ていない。笑

得意な仕事を中心に取り組むようになった
ひとりで何もかも担当していた現場に、自分と同じ役割の仲間が数人増えることになり、幅広く担当していた仕事を分担できるようになった。
誰かの苦手なことは、他の誰かの得意分野。
みんながそれぞれ力を発揮できるように、お互いの役割を見直していった。
- 交渉が必要な場面では◯◯さんが前に出る
- 細かい数字管理は◯◯さん
- 大勢のスタッフを巻き込み、現場を盛り上げるのは◯◯さん中心で
- クレーム対応でダメージを受けてしまったスタッフのケアは私が担当
全員でやるべきところは全員で、それ以外の部分は、それぞれが得意なことを集中して引き受けるようになった。
それまでは、苦手なことも我慢して「自分が何とかしなければ!」と気合を入れて頑張っていたけれど、その必要がなくなっただけでも仕事のストレスは大幅に軽減。
私は以前と比べると、自分でも「サボっているのではないか?」と思ってしまうほど、楽な働き方ができるようになった。
それにも関わらず、仲間からは感謝してもらえるようになって驚いた。
(もし仲間が何人も異動してこなかった場合でも、すでに一緒に働いているメンバーの力を借りて変えられたこともあったと思う)

働く時間をみんなと一緒に見直した
チームのみんなとコミュニケーションを取る中で、ずっと自分が困っていたことを話してみた。
「24時間稼働のようになっている」
以前の私なら「自分が我慢すればいいや」と考えたと思う。
お昼休みだって休めるようになったし、もういいかなって。
でも、思い切って伝えてみたのだ。
そうしたら…「それは大変だよね」と返ってきた。「何かルールを作った方がいいかもね」とも。
誰も私を否定してこなかった。
もっとみんなを信じて頼ってもよかったんだな、と実感できた瞬間だった。
勇気を出して伝えたおかげで、みんなと働き方を見直すことに繋がり、
「こちらから連絡を返す時間を決めよう」
「ルールを守ることに協力してもらおう」
そうやって、人に流されるのではなく、お互いを守れるような働き方へ変えていくことができた。
(ひとりのときはこんなこと思いつかなかったのに!)

自分資産化には「自分を大切にすること」が欠かせない
苦手なことでも、何でもひとりで頑張らなければならない。
身を削って頑張らなければならない。
そんなストレスから解放されて、仕事を楽しめるようになった。
その後また転職したので、今は全く違う仕事をしているけれど、このときの「働き方改革」のための行動は今でも役に立っている。
自分を大切にできないと、いい仕事はできないし、自分も周りの人も幸せにすることはできない。
自分を価値ある存在として扱うことは、全ての始まりなのだ。