あの日、あのとき、あの橋で

一度行ってみたいところがある。

三島スカイウォーク」という、静岡県にある日本最大の吊橋。富士山とそのまわりの絶景を眺めながら空中散歩ができるらしい。

歩くの大好き・絶景大好きなので、私のためにあるようなものだ・・・言い過ぎかもしれないが。

もちろん静岡に限らず、日本国内にはたくさんの橋が存在する。

今までの人生で出会ってきた数々の橋。どの橋にもエピソードのひとつやふたつはある。順番に振り返ってみよう。

山口県岩国市 錦帯橋

生まれも育ちも北関東だが、父親の仕事の関係で、幼稚園の年長~小学校2年生の夏までは山口県に住んでいた。

山口ではいろんなところに遊びに連れて行ってもらった。その中でも錦帯橋は何度か訪れており、特に記憶に残っている場所である。木造のアーチ型の橋で、歩いて渡るのはもちろん楽しく、周りの景色も素晴らしいものだった。

何度目に行ったときだったかは覚えていないが、橋の途中で知らない人に「シルベーヌ」をもらったことがある。

「ケーキだ!!!」

シルベーヌとの初対面である。お菓子やケーキなんてそうそう買ってもらえなかったから、つやつやのチョコでコーティングされたシルベーヌを見て、異様に興奮していたのを覚えている。

くれた人の顔は全然覚えていないけれど、「なんかいい人だなあ」なんて思っていたのだろう、当時は(憶測)。この出来事をきっかけに、今でもシルベーヌはお菓子の中では特別な存在なのだ。橋そのものよりも思い出に残っているなんて。

シルベーヌと同じくらい記憶に残っているのは「人柱」の話である。錦帯橋を建てるときに何人もの人が人柱となった、というもの。

想像力豊かな子どもにするような話ではなかった。誰だろう、教えてくれたのは。

東京都中央区 佃大橋

二つ前の職場にいたころの話。

仕事柄、夜に外を歩くことがあった。当時は中央区に勤務しており、月島・勝どき・晴海あたりはとにかくよく歩いていた。中でも印象に残っているのは、隅田川にかかる佃大橋である。

佃大橋の周辺は、「リバーシティ21」という超高層マンションが立ち並ぶエリアで、夜になるとそれらが煌々と輝くのだ。

リバーシティに限らず、中央区は高層マンションがとにかく多い。佃大橋の上は周りに遮るものがないので、ありとあらゆる高層ビル・高層マンション群を見渡すことができるのだ。

輝く夜景を見ながら、「私はいつまでここにいるんだろう」と、一体何度考えたことだろう。冬の冷たい風が沁みた。

神奈川県藤沢市 江の島弁天橋

2月のある土曜日。江島神社に参拝してから朝ごはんを食べよう!というイベントに参加するため、朝の7時に片瀬江ノ島駅に着いている予定だった。

しかし前日の帰宅が遅かったこともあり(夜型の仕事だったので余計に)、見事に寝坊し、どう頑張っても遅刻確定となってしまったのだ。

バタバタと家を出て、初めて在来線のグリーン車に乗り、化粧を済ませ、乗り換えのタイミングで「遅れます」と連絡を入れた。ぐったりしながら藤沢駅を歩いていたことをよく覚えている。

片瀬江ノ島駅に着いてからがまた長かった。先を行くみんなを追いかけ、江の島弁天橋を走り、走り、走った。

弁天橋の上はとにかく景色が良い。ちらっと富士山が目に入ったが、一瞬「きれいだっ!!!」と思っただけで、無我夢中で駆け抜けた。

駆け抜けたとはいっても、運動不足のために途中で何度か休憩を挟んでいる。江島神社に着いたころにはクタクタだったが、その後の美味しい漁師飯の朝食でエネルギーを取り戻したのだった。

静岡県伊東市 城ケ崎海岸・門脇吊橋

前々職を5月末で退職することが決まっており、慰安旅行として、ゴールデンウィークに伊東へ一人旅に行った。

宿以外はノープランだったので、現地に着いて2日目の朝に「城ヶ崎海岸まで行こう」と決めた。伊東駅からバスで30~40分、終点の伊豆海洋公園から、ピクニックコース的な道を歩いて25分くらいだったと思う。

ピクニックというには険しい道もあり、蜂の羽音に怯えながら、また途中で野生のリスに遭遇したりもしながら、やっとの思いで橋まで辿り着いたのだった。

門脇吊橋の入り口前の看板には、「橋の上でふざけるな」としっかり書いてあった(実際はもっと丁寧な言い方だが)。当然、そのようなことをする人はひとりもいなかったので、終始安心していられた。

橋からの眺めは素晴らしいものだった。ゴツゴツした岩場に打ち付ける白い波、どこまでも続く青い海。青い空。日差し。遠くに見える何らかの島。

小さな島はところどころに見えるものの、海がずーっと遠くまで続いていて「これが水平線かあ……」と、やけに感動したのだった。

この景色を見てから、静岡県がとても好きになった。伊東エリアしか行っていないけれど、なぜか「静岡県」という存在そのものに好感を持っている。

東京都港区 芝公園三丁目の歩道橋

虎ノ門~東京タワーウォーキング(参考)の思い出の地である。

歩き疲れて、ぼーっと遠くを見たら、高層ビルの光がぼんやりと輝いていた。歩道橋の下を眺めると、2~3台の車とバイクが走っているのみ。

なんだか切なくなった。大都会東京にこんな瞬間があるのか、と思った。

でも、そんな景色も好きなのだ。

東京都港区・江東区 レインボーブリッジ

思わず「レインボーブリッジ 住所」で検索してしまった。

東京の有名どころは、すべて港区だけに集約されているものだと思っているのだ。こんなことを言っていたら江東区に怒られてしまう。

JR新橋駅からお台場海浜公園まで、レインボーブリッジをひとりで歩いて渡るという、「どうかしている」企画に挑んだことがある。もう2年前くらいのことだ。

バラエティ番組のスタッフが考えたのではなく、自分ひとりで企画立案・実行までしているあたりが恐ろしい。そしてこの一部始終を、特に撮影・編集・放映もしていないというのだから、さらに恐ろしい。

とりあえず歩いていれば着くよね☆的な「脳内企画会議@タリーズコーヒー」を終えた私は、新橋~汐留間を歩き、レインボーブリッジ遊歩道の入り口まで差し掛かったあたりで後悔し始めていた。

「なんてアホなことを始めてしまったのだろう」

疲れたし、ひとりだし、リタイアできないし。

遊歩道を歩き始めると、とにかく同じ景色が続く。途中に数か所、外を見られるポイントがあるけれど、それ以外はひたすら車道脇を歩くのだ。車の音がすごいし、たぶん排気もすごい。たまに通るゆりかもめ(新交通のほう)が羨ましいとさえ思ってしまう。

そして、ところどころに「連絡用電話」がある。理由はきっと想像の通りだ。かけたらどこへ繋がるのだろうか。今すぐここから出してほしい、なんて言ってみたかった。

お台場海浜公園に着いたときの感動は忘れられない。やっと解放された、そんな気分であった。

帰りはお台場から水上バスに乗り、日の出桟橋まで戻った。最初から、帰りは水上バスにしようと決めていた。徒歩で往復なんて絶対に無理だ。

水上バスから見るレインボーブリッジは美しかった。もう二度と歩きたくないけれど、やっぱりレインボーブリッジは好きだ。そんなことを思っていた。

まとめ

橋にはちゃんと思い出がある。ただ渡るだけのものではない。そこで出会ったもの、見たこと、感じたこと。それらがすべて橋との思い出なのだ。

これだけは言いたい。どの橋も大好きだ、と。

もう行けないのかな、と思うと寂しい。そんなことはないだろうけれど、特に錦帯橋なんかは、頻繁に行けるような場所ではなくなってしまったから。

レインボーブリッジは歩いて渡るもんじゃないと思ったけれど、それでもやっぱり愛着は湧くのだ。

ただ橋を渡るという行為にも、人生にインパクトを与えるような出会いがある。橋は見えない「何か」をも繋いでいるのだろう。こうしてうまいことを言った気になっているのであった。

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末光咲織

末光咲織

東京都在住/夜型勤務の会社員/好きなもの:エレクトーン、ミュージカル、街歩き/気になっているもの:日本の歴史、和食、東京の東側