時を超えるラジオ【伊集院】

何がきっかけになったのかは忘れてしまったが、大学3年生のころ、突然深夜ラジオにハマってしまった。

社会人になってからも、1年半前くらいまでは、ほぼ昼夜逆転の仕事をしていたので、帰宅するとそのままTBSラジオのJUNKかオールナイトニッポンを聴いて寝る生活を送っていた。

それまでラジオを聞いたことがなかったのかというと、決してそうではなく、むしろラジオがよく流れている家庭で育った。

今でこそバラエティ番組をよく見る母も、昔はテレビならNHKかニュース番組しか見せてくれず、それ以外はずっとラジオをかけていた。

母と夕方5時のラジオ

去年の6月から11月まで受講していた某講座で、幼少期のことを思い出す機会が何度もあった。

「お母さんのどんな様子が思い浮かぶ?」と聞かれ、記憶を遡ると「家事をしているところ」しか出てこなかった。(たくさん怒られてきたはずなのに、怒っている顔がまったく浮かんでこないのが不思議である。)


日曜日の夕方5時頃。日が暮れてきているが、節電にうるさい母は、真っ暗になるまで電気を点けようとはしなかった。

薄暗い部屋の中で、ラジオをかけながら洗濯物を畳んでいる。私はその隣に座って、特に手伝うこともなく、ほぼシルエットしか見えない母と喋っていた。


いちばんよく覚えているシーンはこれだ。

ラジオをかけながらも喋り続けているので、ラジオの内容自体はそこまで記憶に残っていない。覚えているのは、交通情報の時報と、よく聴いていた番組が『伊集院光 日曜日の秘密基地』だったことくらいだ。

当時小学生だった私には、ラジオの面白さが理解できなかった。理解できないどころか「つまらない」とさえ思っており、ほぼノイズみたいなものだった。

『日曜日の秘密基地』のなかでも、特にネタコーナー〈秘密キッチの穴〉の意味がまったく分からず、「これの何が面白いんだろう」と、いつも頭に「?」が浮かんでいた。

今なら分かる。そもそも内容が子供向きじゃないからだ。

今だから分かること

「大人になってからこそ分かる面白さ」というものが、ラジオにはあると思う。(もちろん学生向けの番組だってあるが、それは一旦置いといて。)

ほんの十年かそこらしか生きていない子どもが、「〇年くらい前に流行っていた〇〇って、今はどうなっていますか?」なんて質問に共感できるわけがないだろう。

目の前で起きている出来事がいちばん面白くて、常に「今」しか考えずに生きていたのだから当然だ。過去を振り返ることなんてしないし、振り返る意味なんて分からない。


大人になるということは、年を取るということ。年を取るとは、つまり老いるということ。

子どものころは、みんなに可愛がられて、大切にされてきたのに、大人になってしまったら、身も心も衰えていく。社会の圧力に押し潰されるだけの生活が待っている。


当時の私が考えていたことだ。

生きていれば、年を重ねれば、そりゃ責任だって生まれるし、どうしても社会の枠組みにおとなしく収まらなければならないシーンだってある。

しかし、だ。

それがあるからこそ、笑える。「あのときのアレ」の話で、思いっきり笑えるときがくる。積み重ねてきた大人だからこそ、共感できることがある。

〈秘密キッチの穴〉の面白さは、大人じゃないと分からないのだ。今聞き直したら、きっと腹を抱えて笑うのだろう。

ラジオが好きになったということは、大人の楽しさが分かってきたということだ。

深夜ラジオ熱再び

1年半前に転職してからは、深夜ラジオをリアルタイムで聴くことは少なくなっていき、ラジオそのものからもしばらく離れてしまった。

しかし、元日深夜に久しぶりに聴いてみたら、また深夜ラジオ熱が復活してきたので、生活リズムを崩さない方法で聴き続けようと目論んでいる。

ちなみに、私がいちばん好きなパーソナリティは伊集院光さんである。

元日深夜に聴いていたのも、TBSラジオ『伊集院光 深夜の馬鹿力』。そして、小さいころの記憶に残っているのも伊集院さんの番組だ。

「時を超えるラジオ」改め、「時を超える伊集院光」である。

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末光咲織

末光咲織

東京都在住の20代★会社員/ブロガー/エレクトーン弾き(歴14年)★エニアグラム5w4(探求型×アーティスト志向)★SF:内省/最上志向/未来志向/慎重さ/目標志向★人生の主導権を取り戻すべく活動中!